機能不全家庭について
くれたけ心理相談室 松戸支部 国本千尋です。
<はじめに>
機能不全家庭で育った実体験をもとに、生きづらさからどのように解放され、より良い未来に向かって歩み出すことができたか、私なりの向き合い方と対処法をまとめさせていただきました。
機能不全家庭とは
家族の本来持つべき機能が著しく働いていない家族のこと。虐待や生活困難、家族に秘密があるなど実に様々です。
家庭内の対人関係やコミュニケーションが正常に機能していません。
ストレスが日常的に存在しており、子育てや生活など家庭が機能的にうまくいっていない状態であることが多いです。
機能不全家庭の特徴
・拒絶的である・矛盾している・家族に対しての共感が欠如している
・家庭に強固なルールがある・家庭に強固な役割がある・家族に秘密がある
・変化に抵抗する・プライバシーがなく境界線が曖昧etc…
私が育った家庭では、両親は10歳の時に離婚。離婚理由は聞かされておらず、急に父がいなくなりましたが、不機嫌な母に理由など聞けるわけもなく、置いてきぼりにされたような感覚で環境の変化に寂しさがありました。
フルタイムで働きながら女手一つで3人を育てる母は常にイライラ、家では笑顔がない、話を真剣に聞いてくれない、話をしてもいつも否定的、愚痴っぽい、声を荒げることが多い、母自身が思っている通りに事が進まなかったら怒る(他人をコントロールしていた)、自分の考えが正しく他を受け入れない、人を許せないetc..思い返せばキリがないですが、褒められた記憶が思い出せないほど家庭がポジティブな状態であったことの方が珍しいです。
感情的でネガティブ、良いことに目を向けられない、人を褒められない母のもとで育ちましたが、子供にとっては家庭、もっと言えば親が全てでしたから、このような状態であることも、離婚して大変なんだろうなという認識のみでした。
機能不全家庭で育った人の特徴
・自己評価、自己愛、自尊心が低い
・他者への共感に対する理解に欠けている
・ネグレクト、身体的、精神的虐待によるトラウマがある
・対人不安、対人緊張を起こしやすい
・依存症(アルコール、ギャンブル、薬物、共依存など)
その他様々な要因から大人になっても社会で衝突を繰り返し、次第に疲弊していきます。
私自身の特徴として、自己肯定感が低くネガティブ、自信がない、自己犠牲が激しい、常に人の顔色や反応を伺う、感情を出せない、本心を話せないが故に言葉にして伝えることが苦手でありました。これ以上傷つきたくないという思いから、人との距離を取り、人を信じなくなり孤独感もありました。愛情に飢えていたことから、唯一心を開いた人に対して深く関わろう、見放されないように嫌われないように相手の好むことをする、過剰に尽くしたり世話をしたりなどなど。
また、親が絶対的で親の考えから逸れることを許されなかった環境から、自身も完璧主義者であり、白黒思考の持ち主でした。
これらのことから学生時代から社会人になっても、どこか生きづらく、自分は他の人と違って普通じゃないと思い、誰も自分をわかってくれないという孤独感に苛まれてた日々を過ごしていました。
生きづらさを抱えながらも結婚し子供に恵まれましたが、生きづらさやそこから繋がる問題を解決しないまま過ごしていたため、夫婦関係は良くなく、子供に対しても自分が絶対に母のようになりたくないと思っていたのにも関わらず、自分の子供に対して母と同じような態度をとっていることに気づきました。しかしその時はどうして良いのか分からず、ただただ自己嫌悪の日々。
生きづらさからの解放
・感情の解放
ジャーナリングとも呼ばれる心理療法で、言いたいことを我慢してきた子供時代から大人になっても普段から自分の気持ちを表に出すことが難しくなってしまっているため、気分が乗らない時や落ち込んだと感じた時に意識的に取り組むようにしました。書く内容は、頭に浮かんだことをありのままに書きます。とにかく浮かんだことを書きます。ネガティブなこと、ポジティブなこと、問わずです。感情を文字に書き出すことで客観視でき、漠然としたものが明確になったり、新しい一面を知れたり、自分を知るきっかけになります。
ジャーナリングに慣れてきたら、次は具体的な感情の解放です。こちらも書き出すワークを行いました。トラウマとなっている出来事や、モヤモヤを感じた出来事に対して、その当時の状況、具体的な気持ち、本当はどうして欲しかったかを書き出します。感情を示す部分はより具体的に、言葉が悪くなってしまったりするのは気にせずにとにかく思いのまま書くことが大切です。
ここまでくると、辛い記憶が蘇ったり苦しくなることもあるかも知れません。辛くなったらすぐストップすることを忘れないでくださいね。
少しずつ感情を解放し、自分の気持ちを客観視して何か見えてくるものがあったら、それを受け止めてあげましょう。これだけでスッキリしたり、モヤモヤが解消されるような感覚が出てきました。
・感謝ワーク
過去の感情の解放と同じくらい大切にしたいのが、感謝することです。
どんなに小さなことでも、〇〇してくれてありがとう。のようになるべく思いつくたくさんのことを感謝として書き出してみる。
たくさんのしてもらったことに気付けたり、感謝の気持ちを持つことで相手に対して嫌悪感が減少し、優しくなれるような、柔らかな気持ちで対応できることにもつながります。
感謝することの大切さです。当たり前という思いから、どれだけありがたいことだったのかを見つめ直しました。
・“親と私“の間の線引き
親が機嫌が悪いのは元気がないのは私のせい、私が辛いのは私が幸せを感じられないのは親のせい、心理学用語で言う課題の分離ができていませんでした。
他人は変えられないと言うこと、変えられるのは自分自身、自分でコントロールできないことで悩むのはもうやめようと言う考えと出会い、
母の機嫌は私が取るのではない、私の幸せは誰に何を言われても私が幸せと感じたもの以上はない。自分の心の声を大事にするのと同時に、相手にも同じように相手の気持ちを大切にして受け入れることで、私とあなたの間に線を引く事ができ、必要以上に悩み考えることから抜け出す事の一歩となりました。
・新しい価値観に触れるきっかけとなった1冊の本との出会い
心理学の勉強やワークとは別になりますが、人生を変える1冊の本との出会いがありました。(心理療法にもビブリオセラピーなど読書を用いた療法もありますが、私自身は心理学やカウンセラーとしても学びを始める前に本を読むようになったためここではワークではない表記をさせていただきます)
本を読むことは、親子関係に限らず、さまざまな価値観との出会いや気づきのきっかけをくれます。
『自分が幸せになることでしか救えない人生がある』という一文と出会い、相手に合わせて生きてきた私にとっては、大切な人を幸せにするということがまずは自分が幸せになることから繋がるという価値観は新しかったです。幸せじゃないと感じていたところから、『幸せになってもいいんだ』『幸せになれる』『今もうすでに幸せじゃないか』と段階を踏んで少しずつではありますが自分を受け入れ、許し、気づく事ができて心がスッと軽くなるような感覚を覚えました。
<終わりに>
私はまだまだ自分の人生と向き合っている途中だと思っています。家庭環境に悩み苦しんでいる人はたくさんいるのだろうなと感じています。私は自分の過去を振り返り、向き合っていく作業の中で感じたのは「自分が辛かったように、もしかすると私の親も自分の親に対して同じ思いを持っていたのかもしれない」と言うことです。
生まれてくる家庭を選ぶことはできませんが、その場所でどう過ごして、どう考えてゆくかは自分の意思で変えられるということを大人になって気がつく事ができた時に、自分自身の人生を放棄したくないという気持ちが湧き上がりました。
向き合う段階では途中、辛くて目を背けたくなるような時もありました。痛いところには蓋をしてそっとしておくほうが楽でした。しかし私は、家庭という小さな場所の中で起こる人生に大きく影響する考え方や行動を、少しでもより良く、生きやすく、より幸せと思えるため、家族間で起こる負の連鎖を願わくば止めたい、そんな思いから向き合ってまいりました。
こちらのレポートも、自分の思いやこれまでの出来事を振り返りながら客観的に見つめ直す、自分の中の整理の意味も込めてこの課題に取り組ませていただきました。
ここまで向き合うことをやめずにきた自分に感謝いたします。
そしてここまで読んでくださった皆様にも感謝申し上げます。
くれたけ心理相談室 松戸支部 国本千尋
国本千尋 公式サイト