夫婦問題とアンガーマネジメント

くれたけ心理相談室 愛知県長久手相談室の濱崎明子です。
アンガーマネジメント講師としても仕事をしていますので、今回は夫婦問題におけるアンガーマネジメント的な考え方と対処法を紹介したいと思います。

〈今回のテーマ〉

①怒りとは

②夫婦関係によくあるお悩み

③アンガーマネジメント的対処法   

④夫婦は鏡、そして価値観に正解はない

①怒りとは

良くない感情、できれば無くしたい感情と思われる怒りの感情ですが、実は心や身体を守るための防衛感情であり、嬉しい、悲しいなど他の感情と何ひとつ変わらない自然な感情のひとつです。
誰しも大切なものや家族、自分自身に危害が及ぶ時怒りが沸き上がるように、人間にとってなくてはならない感情なのです。怒ってもいいのです。
もし『怒りは良くないもの』『怒らないようにしよう』と考えていらっしゃる方がいた場合は、ぜひ誤解を解いていただければと思います。

では怒りの正体について考えてみましょう。

私たちは誰かや何かのせいで怒らされている、と考えがちですが、実はそうではありません。
怒りの正体は、簡単に言うと『自分が持っている価値観』
例えて言うならば『挨拶はするべき』『食事は残さず食べるべき』『既読スルーはするべきでない』などなど、自分が持つ価値観が破られた(守ってもらえなかった)時に怒りを感じます。
この価値観のあるなしや違いにより、同じ状況にいたとしても怒ったり怒らなかったりする場合が生まれるのです。

そして怒りは天から降ってくるものでも急に湧いてくるものでもありません。しっかりとした発生の仕組みがあります。

怒りを感じた時、その背景には、その人が持つマイナスな感情や状態が隠れているのです。
例えば、帰ってこない子どもが心配で怒る(まっすぐ帰るべき、心配)
遅れそうな時に用事を頼まれて怒る(時間がある時に頼むべき、焦り&不安)
体調が悪くてイライラする(いつでも元気でいるべき、辛い&不眠)
愛されていないと感じて怒る(気持ちを察してくれるべき、悲しい)…などです。

このように私達の心(気持ち)や状態が背景にある上で、価値観が違うことに直面すると私達は怒るのです。
これが怒りが発生する仕組みとなります。

さて、これを踏まえて次を考えていきましょう。

②夫婦関係によくあるお悩み

夫婦カウンセリングの時などによく現われる『価値観の違い』これは、まさしく①でお話した“怒りの正体”そのものです。
例えば、人として正しいと思っていることなのに…とか
うちの実家は代々そうしてきたのに…とか、
友人の配偶者はこうしてくれてるのに…とか
夫として、妻として、親として、人として…とそれぞれが持つ価値観の違いが、お互い納得できない不協和音となり、夫婦関係にヒビが入っていることが多々あるのです。
この問題は、価値観の違いをポジティブに受け入れていくことが問題解決に繋がります。

夫婦カウンセリングをしていて、私が1番困ったのが“過去の怒り”について。
20年前、30年前の怒りがどうしても忘れられない方に、諦めるのでなく、無理やり気持ちに蓋をするのではない方法はないのかをいつも考えていました。

その時に出会ったのが“アンガーマネジメント”
10年前(実は半信半疑で)実践してもらったところ、カウンセリングに来られていた方達から意外な言葉をもらい始めました。
『最近、夫(妻)のことが気にならなくなった』
『あれ(過去)はもう良いかなって思うようになった』
『あ、最近怒ってないかも…』などなどです。

主に、その日あった怒りやイラっとしたことをノートにつけたり、その時の〇〇であるべきという価値観や気持ち・自身の状態を考えてもらっていました。
更に、もし他の立場ならどう考えられる?ということも質問していました。

私とのセッションでは、現状の怒りの対策を考えていただけなのに、きっと怒りについての理解が深まり、ご自身でも過去の怒りについて色々と考え、答えをみつけられたのかなと思います。

今では、アンガーマネジメントは過去の怒りにもアプローチできると自信を持って言うことができます。

③アンガーマネジメント的対処法

さて怒りの地雷ともなる価値観ですが、すぐに変えられるかと言われると、“価値観を変える=負ける”と考える方も少なからず存在しており、なかなか難しい問題です。しかし変えなければ関係性も変わらないので、ソフトに変えていく手段をご紹介します。

100%相手に合わせろと言われると反発する方も、50%なら、それもダメなら30%なら相手に譲ることができたりします。
例えば休日は全て自分の趣味に使いたくても…1ヶ月に1回なら家族のために使っても良いとか、
帰省はホテルが良いけど…1年に1回なら実家に泊まっても良いとか、
インスタントの食事はNGだけど…週末だけなら良いとか、ここなら良いという点は存在します。
それを夫婦で見つけていくことが大切なのです。

これは夫婦で取り組むのがベストですが、できない場合は片方だけで考えていくのでも良いです。
相手はこうあるべきって考えていたのかも?と考えることは、自分の価値観が普通、当たり前と思っていたことにも気がつくことができます。
もしわからなければ、私はこう考えてるけどあなたは?と聞いてみるのも良いですね。
意外と相手も自分の価値観が当たり前と思っているので、え!そう捉える?とかそんな風に考えてたの?と気がつく場合も出てきます。

その時に大切なのは、違う=悪いことではなく、相手の違う価値観も大切だと伝えること。
決して自分に合わせて欲しいのではなく、二人の合意点を見つけたいという意見を伝えること。
この時に使って欲しいキーワードは『せめて』とか『少なくとも』
これを使うとお互いの合意点を見つけやすく、価値観をすり合わせやすくなるのです。

コミュニケーションのコツとして、考えた合意点を3つ挙げるのも良い方法です。
例えば、相手が週末一人で出かけたいと言ってきた時
(本当は1週間以上前に伝えて欲しいけど…)
①7日前に伝える
②3日前に伝える
③1日前に伝える…など候補を挙げます。
候補があれば、相手もじゃあ②でとか(選択肢はないけど)2日前はどうかな?と話しやすくなります。
話しやすくなれば、じゃあその代わり私も1人で出かけても良い?なんてことも伝えやすくなるかもしれませんね。

この話をすると『コミュニケーションを取らないとダメですか?』と聞かれることが多くありますが、そういう時は、「できれば取ってください」とお伝えしています。

しかし二人の状態によって話せない場合もあると思います。
その場合は、自分自身で考えることから始めてもらいます。
全然話していないという状態では、より良い関係にはなっていけませんし、逆に自分ばかり主張している状態というのもコミュニケーションとは呼べません。
まずは自分の価値観を理解し、相手がどのような価値観を持っているかを明確化していきましょう。

④夫婦は鏡、そして価値観に正解はない

夫婦は鏡なので、もしどちらかだけが取り組んだとしても、必ず二人の関係は変わっていきます。なので1人で取り組んでいるからといって心配することはありません。

自分自身の価値観が世の中では当たり前、常識、普通…と信じているからこそ、夫婦間はお互いに自分が被害者だと思っている場合も多くありますが、価値観に正しい・正しくないはありません。
価値観は、生き方や育ち方、環境や学習などから培ってきた大切なものです。
価値観に紐付くお互いの大切なモノを理解できるようになれると良いですね。

怒りの性質として、怒りは身近な存在になるほど強まります。
その背景には、家族だから分かってくれるはずという期待や甘えがあり、怒りが倍増しているのです。

人間の脳は、違う環境・価値観・遺伝子情報を持った二人が出会った時に恋愛ホルモンを出すよう命じます。恋愛結婚の場合は特に、種の保存のための全く違う二人なので、何もかも違っていることが大前提なのです。
それを踏まえて、お互いの価値観をすり合わせていくことがより良い夫婦関係を構築していくための秘訣です。

このことをプライベートや仕事など、何かの折に思い出して頂ければと思います。

 

濱崎 明子カウンセラー

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

くれたけ心理相談室 長久手支部 濱崎 明子
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