メンタライジング・アプローチを学んで

岡田安弘カウンセラー

岡田安弘カウンセラー(岐阜県 揖斐川支部)

くれたけ心理相談室 岐阜県 揖斐川支部の岡田と申します。岡田 安弘 公式サイト

 

1.メンタライジングの定義

メンタライジングとは、ある行動の背後にある精神状態に注意を向けて、それを認識することです。
もう少し簡便にいうと、「感じ考える心で、感じ考える心を思うこと」となります。心については、自分の心と、相手(他人)の心があります。

 

2.メンタライゼーションとは

身体的な欲動・感情の興奮を象徴化された心的内容に変容させ、これらの興奮を象徴的な形で維持する活動のことです。
メンタライゼーションが「感情耐性」と「感情調整」において主要な役割を演じます。そこで、心の免疫システムともいわれます。

 

3.絆としての愛着

① 狭義の愛着は、特定の他者(養育者など)との間の強い情緒的な絆のことです。
② 愛着の特徴は、(恐れ、不安、疲労、病気など)苦痛の状態において、愛着(対象)から「安心と慰め」が得られることです。
③ 愛着が安心基地を生み出すおかげで、子どもは愛着人物から離れて外的世界を探索することができます。

 

4.メンタライジング力はどこから来るのか?

愛着理論においては、乳幼児は、自分に生じる身体的な緊張や興奮を、特定の精神状態として意味づける養育者の応答(ミラーリング)のおかげで、自分の精神状態を認識(メンタライジング)することができるようになり、自己感を形成するようになるとされています。
(母親が、「お腹がすいたの? いま、おっぱいするね」とか「ママがいなくて寂しかった? よしよし、よく我慢したね」とか、乳幼児に話しかけることにより、その概念が取り込まれます。)

 

5.メンタライジングに至るまでの体験・認識のモード

メンタライジングしている状態に至るまでに、精神状態を認識するモードは4つあります。

心的等価モード:現実と心理が一緒。外部世界に心に思うことを投影し、それが現実そのものとして感じられる。
(自分が思ったことが唯一正解だと思う。決めつけ)

ふりをするモード:思考が心的現象と外的現実を橋渡しできていないモード。心が身体的自己を反映したものでなくなっている。
(解釈だけで実感がない)

目的論モード :心理状態は「行動」とその実体的な「効果」だけで表わされる。他者への期待は物質世界に限定される。
(いわゆる行動化もこの一種)

メンタライジング・モード:発言・行動は背景にある心理の表れと理解できる。そして、心理は、外的現実を反映しているが外的現実とは分離しているものとして認識され、多重的な複数の見方で捉えることができるようになる。

 

6.養育者が養護的なミラーリングができなかった場合

乳幼児が養育者から、養護的で適切なミラーリングをしてもらえなかった場合には、乳幼児は自分の身体的な緊張や興奮などを、自分の精神状態として意味づけて認識することが難しくなります。
このとき、本来なら自己認識の核が育つ場所に、養育者の心を取り込んだ「ヨソモノ自己」が生じてしまいます。

養育者が乳幼児に対して虐待的な行為をする人だったならば、「ヨソモノ自己」は、その人(乳幼児)に虐待的な働きかけをすることになります。

 

7.心理療法としてのメンタライジング・アプローチ

① クライアントに見られる「心的等価モード」や「ふりをするモード」を同定し、「メンタライジング・モード」に移行させるための介入を行うアプローチです。
つまり、「自己と他者の精神状態について、それは現実の解釈であるから複数の見方がありうる」という前提に立った推測と解釈ができるようにクライアントを助けるのです。
(その結果として、新しい解釈や多重な意味づけが行われ、新しい世界を体験することができるようになります。)

② カウンセラーは、クライアントがカウンセラーに愛着を形成し、カウンセラーとの愛着の絆が「安心基地」として働く関係を築きます。そして、この安心基地を基盤にして、カウンセラーは、クライアント自身の精神状態と(カウンセラーを含む)他者の精神状態を探求する試みへとクライエントを導きます。
(クライアントの不安な心をメンタライズし、支持すること{を援助すること}で、クライアントに安心基地を提供できると思われます。)

 

まとめ

① 自己理解とか他者理解とかいう名称で呼んでいたことを、メンタライジングという概念でより詳しく説明しているように思いました。そこで使用している、心的等価モードなど、今のクライアントの語りのモードを認識できる概念が得られたのでよかったと思います。

② 私自身が、知的に考えること情緒的に感じることを明確に区別できるようになりました。また情緒的に感じる回路は感度を上げたり、下げたりできることにも驚きました。特に感じないように生きてきたAC(アダルトチルドレン)である私に、情緒を感じる回路が残っていたことにもびっくりでした。

③ 自分の中には「ヨソモノ自己」がいて、何か失敗したり拙いことが起きると、「だから、お前はダメなんだ」と、自分自身が攻撃されていました。それが、とても辛かったことを思い出しました。(30歳代まで、ヨソモノ自己は、いたかな? )

④ クライアントの「心的等価モード(決めつけ)」を、どのように働きかけることで、メンタライジング・モードに持っていけるのか、そのような問いかけをすることが重要だ、と思いました。

⑤ メンタライジング・アプローチでは、カウンセラーとクライアントとの「今、ここで」のやりとりに対して、メンタライジングを行うことが効果的なように思いました。その為には、「今、ここで」の自分自身とクライアントのメンタライジングを十分に行い、自分自身もクライアントのこともしっかりと理解しておく必要があるので、なかなか大変なことのように思いました。

 

【 参考文献 】
上地雄一郎著「メンタライジング・アプローチ入門 愛着理論を生かす心理療法」北大路書房
崔炯仁著「メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服」星和書店

 

 

くれたけ心理相談室 岐阜県 揖斐川支部 岡田 安弘

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