カウンセリングの現場においての受容

くれたけ心理相談室 柏支部 井上未来と申します。

カウンセリングの症例を学ぶ中で、基本である受容について深く掘り下げている本に出会いました。精神科医の高橋和巳 著「生まれ変わる心」という本です。

文中の様々な症例を通して、受容の大切さ、難しさ、奥深さを知ることができます。ここでは受容する過程で起こるカウンセラー、クライエント両者の心の変化、その距離感についてまとめたものを記したいと思います。

受容とは

本書では、カウンセリングの一番の基本は受容であると説いている。

受容とは相手の話に共感をもって耳を傾け、クライエントの言っている内容とその気持ちをそのままに、何も否定せずに、受け入れるという意味である。

クライエントは自分の気持ちをそのままに話し、「聞いてもらえた」「わかってもらえた」「何も否定されなかった」という安堵感の中で緊張がとれていく。そして自分を認めてもらえたという安心が回復への力となる。

そういう意味では、カウンセラーがいかに受容できるかがクライエントの回復に左右することが伺える。

拒絶と応援

カウンセラーが受容できなくなっている時には二つの場合がある。

① クライエントの生き方、意見、気持ちに賛成できなくなって、”拒絶” している場合と、
② クライエントの生き方、意見、気持ちに共感するあまり、それを ”応援” しようとしている場合

離れ過ぎている場合と、近づき過ぎている場合と言い換えることもできる。

このいずれの場合も受容にならず、カウンセリングは膠着⁽こうちゃく)してしまう。クライエントは楽にならないし、カウンセラーも苦しくなってくる。

その際、カウンセラー自身が受容ができていない時の「不全感」に気付くことが大切である。(不全感とは、一方が何かを言って他方が応える、という相互会話が成り立っていない時に感じるすれ違いのことをいう。また相手の話を聞かずに自分のことばかり話す人との間に生じるモヤモヤした感情のことなどをさす。)

相反する心理の融合

悩みを抱えたクライエントの心の動きを表記すると以下のようになる。

「こうあるべき、頑張らなきゃ」というAと、
「もう頑張れない、やりたくない、だめなんだ」というB(つまり反A)が存在している。

Aと反Aが対立しているうちは、クライエントは新しいCという選択にたどり着けない。

 A+反A(B)=C(受け入れた場所)

カウンセラーの役割はこのプロセスをクライエントと一緒に歩んでいくことにある。

クライエントにとってCとは、望めばその場所にずっといてもいいし、Aに行っても反Aに行ってもいい「受け入れた場所」となっている。

心の成長、拡大にはどうしても必要なプロセスで、この二つが融合してCという新しい自分を作っていくのであるが、「A⇔反A」の心の葛藤は辛いものである。

カウンセラーは、イマジネーションを働かせてクライエントの心の動きを感じとっていく。これが受容のもっとも大切な作業である。

カウンセラーがクライエントを受容することは、カウンセラーが自分を受容することによって初めて可能となる。そして、カウンセラーが自分の心を受容する方法は、万人にとっての心の受容の方法である。

受容の幅を広げて深くすることによって自分がより楽になり、見えなかったものが見えてくる。 受容とは、心が大きな対立、小さな対立をどんどん統合して、取り入れ、拡大していくことである、と本書は記している。

感じたこと

本書はさまざまなクライエントの症例をもとに受容の大切さを解説しており、まだカウンセリング経験の浅かった頃の私にはとても深い学びになりました。

もちろん実際の現場では、全く同じ症例はないことは承知していますが、一貫した受容の姿勢は、クライエントが話をする上で信頼の土台になると思いました。

それは実際、私自身が3年間クライエントとして話を聞いてもらう側にいた時、存分に受容してもらっていた、という実感があるからかもしれません。そういう意味でクライエント側の経験はとても貴重であったと感じています。

課題としては、一度きりのカウンセリングになる場合もあるクライエントの方に、自分がどこまで受容の姿勢を示すことができるのか、ということです。これからの経験から学ぶしかないのでしょうが、そこは日々意識しつつ、仕事や家庭での会話にイマジネーションを働かせることを大切にしていきたいと思います。

井上未来カウンセラー

基本的な受容についてのテーマでしたが、今回の内容が少しだけでも皆さんのお役に立てたら光栄です。

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