うつと栄養の関係 ~栄養療法について~

くれたけ心理相談室 札幌支部の有城 蘭です。

<はじめに>

うつの症状を抱えながらご相談に来てくださる方の中には、「何年も精神科に通い投薬治療を続けるが効果がない」と仰る方もいらっしゃいます。精神科の投薬治療は有効な手段ですが、症状の改善にかかる時間や効果に個人差があり、心理サポート(カウンセリング)も同時にとても重要だと感じています。

うつ症状が強く、生きること自体を苦痛と感じている場合は、気持ちを前に向かせて「自分はどうしたいか?」と考えることすら難しい場合があります。そんな時でも比較的取り入れやすい考えとして、必要な栄養を摂ることで、うつの状態を作り出している神経伝達物質のバランスを取っていく」というものがあります。
食事の中に取り入れる栄養を少し意識して見直すことで、うつの症状が軽減できればとの思いからここで共有させていただこうと思います。

心をつくる神経細胞

その時々の感情を作り出しているのは脳の神経細胞と言われ、大きく興奮系・抑制系・調整系の3つに分けられます。

・興奮系が一番多く(ノルアドレナリン・ドーパミン等)、これが適度に分泌されていると元気とやる気が満ち溢れ、気分も良いという好ましい状態になります。
・抑制系の代表はGABAで、脳の神経細胞の30%を占め、興奮した脳を鎮める働きがあります。
・調整系の代表はセロトニンです。興奮系に分類されますが、行動抑制にも働きます。

⇒うつはこの3つのバランスが崩れた状態にあると考えられており、神経細胞から出る神経伝達物質の調整をする為に、精神科にて投薬治療が行われています。

栄養療法とは

私たちの身体は60兆個の細胞からできており、それぞれの機能をしっかりと果たすことで身体は健康に保たれます。その細胞を作っているのが栄養素。

栄養素の供給源は日々の食事なので、食べたもので私たちの身体は作られていくという考えを元に、『適切な食べ物を適切な量・バランスで食べていたら身体は健康になる』として生まれたのが栄養療法(正しくは分子整合栄養療法)です。

投薬治療では副作用として効き目が悪くなったり量が増えたり、種類を変えないと効かないということが起こり得ますが、栄養療法は足りない栄養を補うことで正しい伝達が成される助けとなるので、副作用ゼロで症状改善が期待できるのです。

脳の栄養不足

脳の栄養不足には5つのタイプがあります。

低血糖症タイプ
 →血糖値の調整がうまくいかず低血糖の状態になると、イライラや不安感、集中力の低下や睡眠障害が起きたりします。

鉄欠乏タイプ
→鉄欠乏の状態も神経伝達物質がうまく作られず、また全身に酸素が運ばれにくくなるので、倦怠感・落ち込み・無気力・憂鬱・睡眠障害等が起きやすくなります。

亜鉛欠乏タイプ
→鉄と亜鉛を含む食品は共通するため、鉄欠乏だと亜鉛欠乏も起きやすくなります。亜鉛が欠乏すると味覚障害が起きたり、低血糖を引き起こしたりします。

ビタミンB欠乏タイプ
→ビタミンB⁶を含むビタミンB群は、ドーパミンやGABA、セロトニンを作る上で必要不可欠な栄養素です。これが不足すると睡眠障害・集中力や記憶力の低下・それによる情報処理能力の低下等が起きてきます。

タンパク質欠乏タイプ
→タンパク質は神経伝達物質形成以外にも、身体の至るところで使われる必須の栄養素です。しかし不足しても症状としては出にくく、身体全体のバランスが崩れていく原因の一つと考えられます。

上記のように、それぞれの栄養素が不足する時に出る症状はうつの症状と似ている、間違えられやすいという側面があります。

意識して摂りたい栄養素

身体を構成する大事な栄養素を取ることで、細胞そのものが正しく機能すれば、不調改善に期待ができるのではないでしょうか。

それぞれの栄養素の詳しい働きに関しては省略いたしますが、上記内容も含め、日々の食事に積極的に取り入れてはどうかと思う栄養素を5つ記載します。

タンパク質(動物性・植物性をバランス良く)
脂質(オメガ3をメインに)
糖質(炭水化物)
ビタミン
ミネラル

上記の栄養素はどれも身体と心の両方を健康に維持する為に必要なものですが、こちらもバランスが大切です。

「心と身体は繋がっている」と言いますが、身体の機能が上手く働かないことで、精神的に作用する働きがあるということはご理解いただけたのではと思います。

低GI食品と食べる順番

血糖値が急激に上がるのを防ぐことは、結果的に低血糖を抑えるのに役立ちます。そのため私は、食事の前に低GI食品を取ることをおすすめします。

低GI食品とは、GI値が55以下の食品のことで、食品を食べた後の糖質の吸収を緩やかにしてくれます。

空腹の時に食事をすると血糖値が一気に上昇し、それは身体に負担がかかります。これが続くとインスリンの過剰分泌による低血糖症の症状が出てきてしまいますので、私は「食事の前に低GI食品を食べる」ということを意識しています。

私は常にナッツや高カカオチョコレートを常備し間食にしています。果物も毎日食べるようにしていますが、果糖が高いので中でもGI値の低いバナナは毎日最初に食べるようにしています。

食事の順番として、野菜→肉などの主菜や汁物→炭水化物というのが良いというのを聞いたことはありませんか。炭水化物よりも野菜や肉・魚のGI値が低いので、(GI値が)低いものから食べると意識してみてはいかがでしょうか。

低GI食品は調べると様々なものがありますので、ご自身が好きな物・食べやすい食品を選ぶと無理なく続けられるのではないかと思います。

食事の際に全ての食品の栄養素を考えながら料理するのは、大変に思われるかもしれません。私は『ま・ご・わ・や・さ・し・い』を活用して、バランスの良い食事を意識しています。

ま→豆類(植物性たんぱく質)
ご→ごま(良質な脂質やたんぱく質)
わ→わかめ等の海藻類(ミネラル)
や→野菜(ビタミン・食物繊維)
さ→魚や肉(動物性たんぱく質・脂質)
し→しいたけ等のきのこ類(ビタミン・食物繊維)
い→芋などの炭水化物(糖質)

最後に

私は以前、ストレスにより睡眠障害を患ったり、昆布を食べ過ぎて甲状腺機能低下症にもなったことがあります。どちらも、摂った栄養が不足していたり過多だったりして、身体の機能に異常が起きてしまったのです。

この時、うつの症状が出ていたので心療内科を受診しましたが、自分が食べていた食品の影響や栄養不足による体調不良について知ったのはこの時です。

うつの症状が出ると「うつになった」と思ってもおかしくないですし、病院でその症状だけ言うとうつと診断されるでしょう。私の場合は、たまたまその付近で受けた人間ドックの血液検査によって甲状腺機能低下症→昆布の食べ過ぎが発覚しました。甲状腺機能低下症には、うつとよく似た症状が起きるのです。違う病気だと気づかなければ、もしかしたら症状だけで判断してうつの投薬治療をしていたのではないか、そして全く改善されず何年も苦しんでいたのでは・・・と今でも思います。

先生の誤診というより、身体の中で起きている別の要因に気づいてもらえないということは起こりうるのだと実感してから、栄養と身体の関係・臓器やホルモンの働きが精神にどう影響を及ぼすのか興味を持って学ぶようになりました。

食事は一生続くので、無理なくずっと続けられるためには、自分に合った食べ方や食品を選ぶことも大切だと思います。健康の為に必要な食事・睡眠・運動を取り入れたり改善することは、身体と心の両者に影響を与え合うのだということに関して、栄養の観点から重要だと思ったことを書かせていただきました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

※参考文献 「うつは食べ物が原因だった」 溝口 徹著

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