心理カウンセラー 櫻井と申します。
今回はうつ病についてまとめてみました。
うつ病は、誰でもかかる可能性のある病気です。過剰なストレスや過労などが長期間続くことにより、不眠、食欲低下、一日中気分が落ち込む、何をしても楽しめないなどの症状が2週間以上続いている場合、うつ状態になっている可能性も。
うつ病は早めに治療を始めるほど回復も早いといわれていますが、なかなか自分では気づけない場合が多く、家族や友人、職場など周りから勧められて来院される方、身体的不調から内科や耳鼻科、脳神経外科へ受診し検査しても異常がなく、医師から心療内科受診を勧められ来院される方も多くみられます。
【 うつ病になりやすい人の思考 】
○先読み思考…悲観的な予想をし、自分の行動を制限する
○白黒思考…物事を 0 か 100 で極端に考えやすい
○べき思考…~すべきと自分にプレッシャーをかける
○深読み…人の気持ちを深読みしやすい
○自己批判…必要以上に自分に関連づけて自分を責める
【 うつ病の身体症状 】
○消化器…吐き気、嘔吐、胃痛、腹痛、食欲不振、過食、便秘、下痢
○循環器…胸のつかえ感、動悸、胸痛
○呼吸器…息苦しさ
○脳神経外科…頭痛、被帽感、集中力低下、物忘れ
○整形外科…首・肩・背中の痛み、手足のしびれ
○耳鼻科…喉の違和感、めまい、耳鳴
〇口腔外科…味覚異常
【 うつ病の精神症状 】
○抑うつ気分…落ち込む、気分が晴れない、悲しい気持ちになる
○喜びの減退…今まで楽しめていたことが楽しめなくなった
○不眠…寝つきが悪い、夜中何度も目が覚める、朝早く目が覚める、熟睡感がない、悪夢を見る
○食欲がない又は過食…体重の大きな増減
○集中力の減退…文字を読んでも頭に入らない
○思考力の減退…献立が決まらないなど容易く判断できなくなった
○精神運動焦燥…そわそわして落ち着かない、焦燥感
〇精神運動制止…何をするにも時間がかかり動作が遅くなった、ぼーっとする
○意欲減退…何をするにも億劫
○罪責感…自分は周りに迷惑ばかりかけている
○自己の無価値感…自分なんて生きていても意味がない
○希死念慮…消えてしまいたい、死んでしまいたい
【 こころの状態は通常行われる検査ではわかりにくい 】
下記のように身体的検査をしても異常が見つからず、他院から心療内科へ紹介されるケースも多くみられます。
○吐き気や胃痛や腹痛で内科へ受診して血液検査、胃カメラ、腹部エコーをしても異常がない
○動悸や胸の痛みで循環器へ受診して心電図や心エコーをしても異常がない
○息苦しくて呼吸器へ受診して胸のレントゲンを撮っても異常がない
○集中力低下や頭痛で脳神経外科へ受診して脳 CT や MRI をしても異常がない
○首の痛みや肩こりで整形外科へ受診しても異常がない
○めまいや耳鳴で耳鼻科へ受診しても異常がない
うつ病とは
私たちの脳機能は脳内の神経伝達物質がバランス良く働くことで保たれていますが、うつ病はその脳の働きに何らかの問題が起きた状態であると考えられており、現在のところ「モノアミン仮説(モノアミンの低下が原因であるという仮説)」が有力と言われています。
現在、うつ病の治療の中心となっている抗うつ薬は、このモノアミン仮説に基づいて作られていますが、脳の構造は非常に複雑で現在の医学をもってしても解明されていない部分の方が圧倒的に多いと言われています。
モノアミンとは
モノアミンは気分に関係する神経伝達物質のことで、ノルアドレナリンやドパミン、セロトニンなどの総称です。この3つは精神疾患と深い関係があるとされ、三大神経伝達物質と呼ばれています。日々生じる様々なストレスにうまく対処することができず、これらの神経伝達物質が減少すると、抑うつや不安感などの精神症状や、不眠や食欲低下、疲れが取れないなどの身体症状が現れるようになり日常生活に支障を生じる場合があ ります。
モノアミンの種類と特徴
【 ノルアドレナリン 】
神経を興奮させる神経伝達物質で“意欲”に関係します。 ストレスに反応して怒り・不安・恐怖といった感情を起こすことから「ストレスホルモン」とも呼ばれます。
不足すると?
気力低下・意欲低下・関心の低下など、いわゆる抑うつ状態の症状が現れます。
【 ドパミン 】
快楽、学習能力、運動機能や記憶力を司る神経伝達物質です。 ドパミンは“快楽”という報酬から意欲を作るホルモンで、時間を忘れて好きなことをしたり、より良い記録を目指して頑張れるのは、物事を達成したときにドパミンが快楽という報酬を与えてくれるからです。
不足すると?
関心が薄れ、運動・学習性機能が低下します。
【 セロトニン 】
ノルアドレナリンやドパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える神経伝達物質です。 セロトニンはストレスによるイライラを抑えて心身の安定や心の安らぎなどにも関与することから、オキシトシンとともに「幸せホルモン」とも呼ばれます。
不足すると?
精神のバランスが崩れてストレスが溜まりやすくなり、暴力的になったり、落ち込みやすくなると言われてい ます。
※セロトニンとノルアドレナリンには痛みを抑える働きがあるとも考えられているため、これらの神経伝達物質の不足により“痛み”が出現することがあります。 例)頭痛、首~肩背中の痛みなど
うつ病の治療について
【 生活指導 】
〇休息→ストレス因を回避する
〇バランスの良い食事・規則正しい睡眠・適度な運動
〇家族・職場・友人の理解と協力→うつ病は周囲の理解・協力があると何倍も速く治るといわれています。
家族:普段通り接し、生活リズムを整えられる環境づくり、安らぎを与える工夫をする
職場:病気であることを理解してもらい、休養できるように調整してもらう
友人:余計なおせっかいはNG、気晴らしに連れて行くのもNG
「頑張れ」NG…頑張らなきゃだめだよというニュアンスが含まれてしまうため
【 精神療法 】
〇認知行動療法
〇小精神療法…中途半端に“考え方”や“行動”に触れない 、時間が限られている外来診療の中で行われる精神療法
①うつ病は病気であることを理解してもらう
うつ病は甘えだと誤解していると自責感が悪化したり自信がなくなったり経過も悪くなってしまいます。
②休息は治療であることを理解してもらう
③必ず治るが経過は一進一退であることを理解してもらう
④治療が終わるまで重大な決断をしないように約束してもらう
ネガティブな状態では正常な判断ができないことがあります。後で変更がきかないような大きな決断は、うつ病が治るまでなるべ
く延期するように伝えます。 例)離婚、退職、引っ越しなど
⑤服薬の重要性を理解してもらう
うつ病は病気です。「薬に頼っているようではダメだ」と考えてしまう方もいますが、医師が薬が必要と判断した場合は、きちん
と服用し治療することが大切です。
【 薬物療法 】
〇本人が立ち上がるためのサポート薬
〇本当の意味での治療は薬物療法と生活指導と精神療法と三位一体となって行われます。
「まとめ」
心は可視化も定量化もできない、とても繊細な部分です。ストレス因がはっきりしている場合は本人も自覚しやすいですが、眠れない、頭痛、食欲不振、便秘、下痢、めまいなどの症状で心療内科へ受診される方は少なく、仕事のことを考えると気持ちが落ち込む、人と話すと泣けてきてしまう、誰にも会いたくない、寝つきが悪くなり飲酒量が増えた、これまで楽しめていたことが楽しめなくなり友人の誘いを断るようになった、朝起きれず会社を休みがちになった、ミスが増えたなど、この頃になってようやく自分でも何かおかしいと気付いてきます。ですが自らというより産業医や他科の医師、カウンセラー、家族や友人などから勧められ受診される方も多くみられます。 ここにまとめた内容が、ご自身や大切な方の体調を知る際のお役に立てていただけましたら幸いです。
参考資料 【書籍】
気になる向精神薬(メディカル・サイエンス・インターナショナル) 著者:天沢ヒロ
精神診療プラチナマニュアル Grande(医学書院) 著者:松崎 朝樹
心理カウンセラー 櫻井理紗