子どもの健全な成長を支える関わり方に関する一考察 ~ アドラー心理学と NLP の視点を手がかりとして ~

くれたけ心理相談室 横浜支部の酒井のり子です。

1.はじめに

子どもが健やかに成長していくためには、家庭における養育者の関わりが大きな意味を持つ。
日々の何気ない言葉かけや接し方は、子どもの自己肯定感や対人関係の基盤、さらには社会との関わり方にも影響を与えると考えられている。
しかし子育てには明確な正解があるわけではなく、多くの養育者が試行錯誤を重ねながら子どもと向き合っているのが現実である。その中で、どのような関わりが子どもの主体性や自立心を育てるのかを理解することは、保護者支援の視点からも重要な課題である。
本稿では、子どもの自己肯定感や主体性の形成に着目し、養育者の関わり方が子どもの発達にどのような影響を及ぼすのかを、アドラー心理学および NLP の視点から整理する。

2.人は本来、自律的な存在として生まれる

人は誰もが、自分の感覚や欲求に基づいて行動する存在として誕生する。しかし成長の過程において、社会のルールや評価基準を学ぶ中で、外的基準に適応した行動様式を次第に身につけていく。
この過程自体は社会生活に必要不可欠であるが、過度に評価や指示に依存した関わりが続くと、
・自分で判断することへの不安
・正解を求めすぎる傾向
・失敗への過度な恐れ
といった心理的特徴が形成されやすくなる。

3.子育ての目標 ― 自立と共同体感覚の育成 ―

アドラー心理学では、子育ての目的を次の二側面から捉えている。

行動面の目標
・自立して生活できること
・社会と調和して生きること

心理面の目標
・「自分には人生を解決する力がある」と感じられること
・「他者は仲間である」と思えること

これは単なる従順さではなく、主体的に社会へ参加できる力を育てることを意味している。

4.叱責や評価中心の関わりがもたらす影響

叱責、罰、過度な評価を用いた関わりは、短期的には行動を変えるように見えるが、長期的には
・自己否定感の形成
・評価への依存
・失敗回避的態度
を生み出す可能性がある。
こうした体験の積み重ねは、子どもが自分で考え行動する力を弱めてしまうことにもつながりかねない。

5.原因ではなく「目的」に注目するという視点

アドラー心理学の特徴は、問題行動の原因追及ではなく、その行動がどのような目的を持っているかに注目する点にある。
子どもの行動は主に四つの目的に整理される。これらはすべての子どもに一律に当てはまるものではないが、比較的男の子に行動として表れやすい場合があるとも言われている。
ただし発達や気質には大きな個人差があるため、性別で決めつけるのではなく、その子自身を理解する視点が重要である。

・注意の獲得
自分を見てほしいという思いの表れであり、望ましい行動に注目する関わりが有効である。

・権力争い
自分の存在を示したいという感情の表れであり、大人が対立構造を作らないことが求められる。

・復讐
傷ついた体験の表現であり、行動の是正よりも関係の回復を優先することが重要である。

・無気力の誇示
失敗への防衛的態度であり、過度に手助けせず、小さな達成感を支える関わりが必要となる。
この視点は、過去の原因を責めるのではなく、今どのように関わるかを考えるための実践的な手がかりとなる。

6.「褒める」よりも「勇気づける」関わり

評価基準に基づく賞賛は、「できたときだけ認められる」という条件付き承認として受け取られる場合がある。
それに対して重要とされるのが勇気づけである。勇気づけとは、
・結果ではなく過程に目を向ける
・他者との比較ではなく、その子自身を見る
・存在そのものを尊重する
といった関わりであり、子どもが「自分はこれでよい」と感じられる基盤を育てる。

7.NLP にみる個人差への理解

NLP では、人の情報の受け取り方には
・視覚的理解
・聴覚的理解
・体感覚的理解
といった傾向の違いがあるとされている。
養育者が子どもの感じ方や理解の仕方の違いを尊重し、言葉を受け止めて返す関わりや、状態やペースを合わせる対応を行うことで、子どもは受容されている安心感を持ちやすくなる。

8.養育者自身の在り方の重要性

子どもは言葉だけでなく、大人の生き方そのものから価値観を学んでいる。
養育者が自分自身を受け入れ、自らを勇気づけながら生活している姿勢は、子どもの自己肯定感の形成に大きく影響する。
そのため、子どもへの支援は養育者への支援と切り離して考えることはできない。

9.おわりに

本稿の内容は理論的理解にとどまらず、筆者の子育て経験とも深く重なっている。三人の子どもを育てる過程において試行錯誤を重ねる中で、これらの書籍に出合い、その考え方に勇気づけられてきた。また、この出会いを契機として心理的支援の学びへとつながり、子どもへの関わりをより多角的に捉える視点を得ることとなった。
子育ての中では、親が教える立場であると思いがちであるが、実際には子どもから教えられることも少なくなかった。子どもは親の所有物ではなく、一人の独立した人格を持つ存在であり、親子であっても感じ方や考え方は異なるという、ごく当たり前でありながら見失いがちな事実に気づかされてきた。
子どもの健全な成長を支えるとは、思い通りに育てることではなく、その子がその子らしく生きていく力を信じて関わることである。そのためには、養育者自身もまた、自分の在り方を見つめ直しながら歩んでいくことが大切である。
本稿の内容が、皆様それぞれの実践や経験と重ね合わせながら、子どもとの関わりを考える際の一助となれば幸いである。

参考文献
朝妻秀子(著)
『男の子の将来が決まる!10 歳までの「言葉がけ」』
『子どもが本当は欲しがっているお母さんの言葉』

酒井のり子カウンセラー

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