カウンセリング時の認知行動療法(CBT)の進め方について

くれたけ心理相談室 愛知県安城支部の柴田桃子です。

1.はじめに

カウンセリングにおいて、相談者様の相談内容によっては、認知行動療法(以下「CBT」)をご提案し、一緒に取り組んでいくことがあります。私は、以前勤めていた職場でCBTを学びました。その後、カウンセリングで使用するようになり、より学びや理解を深めたいと思い、CBTについての文献をいくつか読み活用しています。相談者様と共に取り組み、変化していく過程を共に感じられる時間は、何ものにも代え難いと感じます。
今回、私がカウンセリング時にどのようにCBTを進めているのかを記したいと思います。

※認知行動療法(CBT)とは、認知(物事の捉え方、見方、受け取り方)に着目し、偏ってしまった考え方からバランスがとれる考え方になるよう、思考とともに行動も含めて取り組んでいく心理療法の一つです。

2.進め方

(1)相談者様から、お話を聴かせていただく中で、

 ・何でも悪い方に考えてしまう
 ・不安に振り回されて辛い
 ・変わりたい(考え方を変えたい)
 ・ちゃんとやらなくてはいけない、できない自分はだめだと思う
 ・生き辛さを感じている

と言った内容が出た時に、認知(物事の捉え方、見方、受け取り方)育ってきた環境の影響についてお伝えします。そこからより深く(可能な範囲で)お話を聴かせていただいたりします。

(2)今後どうなりたいか、どうしたいか(目標設定)、相談者様のお気持ちを確認した上で、ご提案の一つとして、CBTについて本を数冊出して見ていただきながら、また絵を使って説明します。(カウンセリングの際は、CBTの本を数冊持参しています)

 ・認知 行動 療法とはどのようなものか
 ・「考え方のクセ」について
 ・考え方を変えるというよりは、「考え方に幅を持たせる」というイメージであること
 (今までは一つしかなかった考え方が、「こういう見方もあるんだ」「こう考えてもいいんだ」と思えること)
 ・練習が必要なこと、そのために宿題を出すこと
 ・継続して見ていくことが必要なこと

(3)説明を聞いてどう感じられたかをお聴きし、必要であればご検討いただくようお伝えします。中には、更に興味を持たれたり、CBTに取り組みたいお気持ちを持っている相談者様もいらっしゃいます。その方には、実際にどのようにカウンセリングの中で進めていくのかをより詳細にお伝えします。

◎進め方としては、2つ準備しており、相談者様に選んでいただきます。
  ①いつでも見ていただけるよう本を購入し、カウンセリング時に持参していただく。
   ワークブック付きなので、ご自身で取り組むことも可能
  ②本もワークプリントもカウンセラーが準備し、カウンセリング時に一緒に見ながら取り組んでいく    

・取り組む期間は、相談者様の希望をお聞きし、希望に沿ってカウンセラーの方で進め方の計画をある程度ですが立てます。
・取り組む間隔については、2~3週間間隔をご提案します。あまり空けすぎると、思いや記憶の面で薄れてくることもあり、取り組みの効果としても変わってきます。1ヶ月以上は空けない方がよいことをお伝えしますが、間隔においても、相談者様の希望をお聞きします。
・強く出ている考え方のクセが100%悪いものではなく、自分自身を守ったり助けてきた考え方でもあることをお伝えします。
・長年付き合ってきた考え方でもあるため、完全になくなるわけではなく、CBTを通して、違う考え方や見方を取り入れて、強く出ている考え方を柔らかくしていく(考え方に幅をもたせる)ことをお伝えします。

◎この時点で、CBTに取り組んでいくお気持ちがかたまっていらっしゃる方には、カウンセリングチケットについてご案内します。

(4)2回目は、まず事例から、人にはそれぞれの受け取り方があること、どう受け取るかによって気分や行動が変わっていくことを知っていただくことから始めます。
その後、自分にどんな考え方のクセがあるのかを知るワークに取り組みます。そして、そう考えるようになったきっかけや、他の考え方はないか等も見ていきます。   

【主に取り組む、ベースとしている内容】
 ①出来事・気分と気分の強さ・自動思考(3コラム)
 ②3コラム+根拠・反証(5コラム)
 ③5コラム+適応的思考・今の気分(7コラム)
 ④アクションプラン
 ⑤スキーマ

ワークは、カウンセラーも一緒に考え取り組みます。その取り組んだワークを宿題に出します。(※宿題は、無理をしてやらないことをお伝えします)
基本は、本の最初から取り組んでいきますが、相談者様のお話をお聴きし様子を見ながら、進め方や順番を変更することもあります。

(5)3回目以降は、宿題と本を見ながら取り組むところの確認をします。CBTがメインではありますが、その時に気になっていること、困っていること等あった場合は、相談者様と一緒に何から取り組むかを考えていきます。相談者様の状況、気分、体調等で、その日に取り組む内容を変更することもあります。
一つ一つ取り組んで行く中で、進み具合と相談者様の様子を見ながら確認して、カウンセリングを受ける間隔も変えていきます。間隔を空けていくことで、ご自身の力で対処していけるよう取り組んでいきます。

3.終わりに

私自身、強く出ていた考え方があり苦しかった時期があります。実際にCBTに取り組み、心理の勉強をしていたこともあり、以前と比べてかなり考え方の幅は広がったと感じています。
また、くれたけ心理相談室と出会う前にカウンセリングをしていたのですが、私にとって初めてのクライエント様で、取り組んだのがこのCBTでした。一緒に考え取り組む中で、クライエント様の変化を一緒に感じられることが、とてもとても嬉しく、その時に「こんなふうに心に関わる仕事をしていきたい」と強く思いました。

CBTでは、自分と向き合う時もあるため、取り組む相談者様のお気持ちがとても大切になります。そして、サポートするカウンセラーの気持ちも大切になると思っています。
一つの療法であるため、合う合わないももちろん出てきます。そのため、相談者様がどう感じられたか等確認して方法を変えることもあります。
CBTに取り組んでみないとわからないこと、見えてこないこともあります。また、取り組むことで、自分の考え方への見方が変わったり、考え方とどう付き合っていくかが見えてきたりもします。
くれたけ心理相談室とご縁をいただき活動を始めてからも、様々な形でCBTに取り組んできました。取り組み方も、それをサポートするカウンセラーの進め方も様々ですが、その一例として捉えていただけますと幸いです。

<参考文献・使用している文献>

大野裕(2003)『こころが晴れるノート』創元社
*私が初めてCBTを知るきっかけになった本で、この本から始めました。

福井至・貝谷久宣(2018)『今日から使える認知行動療法』ナツメ社
*今一番使用している本です。マンガもありわかりやすく書かれていると感じます。

福井至・貝谷久宣(2015)『心がスッと軽くなる認知行動療法ノート』ナツメ社
*シンプルで手に取りやすく、ひとりでも取り組みやすい本だと感じます。

伊藤絵美(2020)『セルフケアの道具箱』晶文社
*セルケアとなるワークも記載してあり、ストレスとの向き合い方、スキーマについても
 わかりやすく書かれてある本です。

くれたけ心理相談室 安城支部 柴田桃子
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