ダブルバインド(二重拘束)

くれたけ心理相談室 豊田支部の岩崎景子です。

<はじめに>

育ってきた環境や社会で感じる場面も多く、私自身もあらゆる場面で無意識にしてしまっていた『ダブルバインド』をテーマに取り上げました。

『ダブルバインド(二重拘束)』とは

二つの矛盾した要求や情報を受け取ることで、どちらの選択肢を選んでも罪悪感や不安感を覚える心理的ストレスのある状態のこと。

【例:子育て】
保護者が子どもに「どこに行きたい」「好きなもの買っていいよ」「自分で決めなさい」と言いつつも、子どもが決めたことに「それはダメ」と言語で禁止・否定する。あるいは、非言語(ポーズ、ジェスチャー、声のトーン)で禁止・否定する。
⇒親が認めるものを選びなさいという矛盾したメッセージを送られ、子どもは混乱し、従わざる負えない

【例:会社】
上司が「分からないことは聞いてね」と言ってくれたので、質問すると「自分で考えて」と言う

ダブルバインドを受け続けると...
考えることをやめ、行動しなくなる
・「否定されるのではないか」と恐怖が付きまとい、自分の思った通りに行動できなくなる
・感情を抑え込み、周囲の期待に応えようとする
・自分の意思で選択したものが認められず、自信が持てなくなる
・常に混乱の中にいるので、何が正しく、何が悪いのか正常な判断ができない
・他人の顔色を伺い自立心や自主性を失う

ダブルバインドへの対処法

【相手がダブルバインド】

自分が悪いのではありません。相手のメッセージの矛盾に気づくことが大切です。

① 状況や行動を観察したうえで、メッセージの矛盾に気づき、相手に状況を確認する。また自分の気持ちや考えを相手に率直に伝える。
② 紙に書く、人に相談する
相手の言動やその時感じた自分の気持ちや考え、自分がどんな反応をしたのか、それに対して相手はどんな反応をしたか。観察したことをすべて書き出します。自分の身の回りで起こっている事態を客観的に把握し自分の気持ちを整理することが大切です。

【自分がダブルバインド】

カウンセリングで自身の素直な気持ちに気づき、伝えたい事を明確にします。

(例)A さんは、外出する夫に「いってらっしゃい」と不機嫌そうに送り出します。

相手の行動 言いたいこと
夫が頻繫に遊びに出かける 私だって遊びに行きたい

 

①言いたいことをIメッセージに書き換えます。

相手の行動 自分の感情 具体的な影響
夫が頻繫に遊びに出かける 寂しい 気分が落ち込み家事が手につかない

主語を自分にして、素直な気持ちを伝えてもOK。伝えにくい、角が立つと感じたら②へ

②感情をポジティブなものに変え、双方が楽になるように文章を変えます。

相手の行動(ポジティブ) 自分の感情(ポジティブ) 具体的な影響(ポジティブ)
一緒に出掛ける うれしい 気分転換できる

(他)助かる、ありがたい、楽しいなど
(例)あなたと一緒に出掛けられたら、私も気分転換できてうれしい

※あくまでも、自分の本心に気づくためのワークであり、必ずしも伝えなければならないものではありません。伝え方、聴き方の技術を繰り返し練習することで、新たな気づきが生まれることもあります。

まとめ

子どもが小学生の頃、『お母さんは僕が遊びに行くって言うと、(いいよとは言うものの)イヤそうな顔するよね』と言われ「ハッ」としたことがありました。それから数年後、自身の悩み問題から抜け出すため、心理カウンセラー講座で、この「伝え方」を学び、子どもの言葉を思い出し、自身の言動を振り返ることができました。
家族関係や仕事をするうえで、気まずい空気を作りたくないと思うあまり、感情を抑え、やり過ごすことがとても多いと感じます。メラビアンの法則では、言葉に対して感情や態度に矛盾があった場合、非言語からの情報を重視する傾向があると言われています。どんなに言葉で取り繕っても、表情や行動に表れてしまうのです。子どもは親を真似て大人になります。母親が本音を隠せば、子どもも本音は隠すものだと感じ、本音は言ってはいけないと思い込むでしょう。次第に自分にも、頑張りたくないのに、頑張らなければならない。頼りたいのに頼ってはいけないと矛盾したメッセージを送り、感情や欲求を表現することなく頑張り続けることになります。悩みの問題は相手にあると思いたいところですが、まずはご自身ですら気づきにくい、隠れた本音と向き合うことで、心の内を明かし合え、信頼関係が築けるのだと思います。

<最後に>

カウンセリングを学ぶ機会がなければ、私のように『ダブルバインド』を自分自身も無意識にしていることに気づかない方は多くいらっしゃると思います。用語は知らなくても、家庭や職場で、相手に対し何かしらの矛盾や違和感を覚えたことはよくありました。その度に混乱に陥り、自分が悪いのではないかと思い悩むこともありました。矛盾に気づいたとしても、言葉にすることなく感情を抑え込み...とダブルバインドは連鎖します。カウンセリングを通じて、ご自身の本当の気持ちに気づく大切さを知っていただき、ダブルバインドの連鎖を断ち切り、人と人とが互いを尊重し、大切に思い合える社会になることを願っています。

くれたけ心理相談室 豊田支部 岩崎 景子    
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