対話(やりとり)分析~交差的交流
くれたけ心理相談室 生駒支部 古坂 禄子と申します。
カウンセリングを承る中で、最近増えている『カップルカウンセリング』。その中で、わたしが時々クライアント様へ理解を深めていただくために、用いさせていただく交流分析のひとつ、『対話(やりとり)分析』をご紹介させていただきます。
カップルカウンセリングで、はじめの主訴としてよく伺うものに、「言い争いが多い、理解しあえるようになりたい」というものがあります。
個別のお時間で、それぞれカウンセリングを伺うと、そのパターンが出てきます。例えば、次のような事例をご紹介します。
(事例)
夫:俺の帽子、どこに片づけたの?
妻:なんですぐに私に聞くの?自分で探してよ!
このような会話が日常茶飯事、繰り返され、奥様は苛立ち、ご主人はそれがわからないといった事例はよくあるものかもしれません。
この会話の、何が問題で言い争いに発展するのか、カウンセラーとして、おふたりにご説明する際に、時々用いるのが『対話分析』です。
<対話分析とは>
交流分析という心理学の中にある分析方法のひとつです。
エゴグラムというものが交流分析の中でありますが、その自我状態を会話のやりとりに当てはめて分析するものです。
エゴグラムについては、ご存じの方も多いので、説明は簡単にさせていただきますが、人が感じたり考えて行動するときの心の状態を構造分析で「P(親)」「A(成人)」「C(子ども)」と大きく3つに分けられます。これをさらに機能分析で5ないし6に分けるものがエゴグラムですが、今回の対話分析は先の3つを用いて、わかりやすく説明させていただきます。
では、先ほどの事例を、早速当てはめてみます。
先に質問を投げかけたご主人は、エゴグラム(P ・ A ・ C)で言えば、A(成人)に当てはまります。物を探すため、他者に尋ねた客観的態度です。そして、その言葉のボールは相手のA(成人)に投げられています。情報をくださいというものです。
では、次に受け取った奥様のエゴグラムはどうでしょう。
物のありかを尋ねられた言葉を、頼ってこられて迷惑に感じ、相手に対し、自分で探すように指導・指示をしています。
この時のエゴグラムは、相手をC(子ども)とみなし、P(親)として受け取り返していることがわかります。

このように、ベクトルが交差しているやりとりを『交差的交流』と言います。お互いの発信先や受取先が異なっていることで批判的な会話の構造になることを、クライアント様へご説明いたします。
では、この構造がどうなれば良いのか。交差せず、お互いに平行になることがお互い求めあう反応として受けとめ合えるようになります。
例えば次のように、奥様が A として受けとめ返せば・・
夫:俺の帽子、どこに片づけたの?
妻:私は触っていないし、知らないよ。/ 玄関のフックにかけておいたよ、など

お互いに、客観的事実を述べあえば、冷静に会話を返せます。
また、ベクトルが異なったとき、相手はその返されたベクトルに合わせて受けとめてみることも言い合いを避ける方法にもつながります。
先ほどの事例1図式のように妻から怒りがかえってきたあと

A で返してもらうはずだった夫は、妻の受け取った先と向かってきた方向が違うことに気づいて、相手が求めた先 C で受けとめ P へ返します。
夫:そうだね、ごめん。ちょっと探してみるよ。

これなら、言い合いも長引かずに終わります。
これはあくまでも、こうすべきではなく、なぜ言い合いになるかを、構造分析を用いて説明してさしあげ、お互いにわかりやすく受けとめていただくためのひとつです。ご自身はどの自我状態が日頃多いのか、どの対話構造が多いのかを考えて頂くと、言葉の投げ方、受け取り方を、ご一緒に見直していただく時間にもなります。もちろん、一番大切なことは、なぜそう受けとめてしまうのか、そう投げてしまうのか、根本的な面も、個別面談の中ではカウンセリングを行いながら、おふたりご一緒の時間の際、このような捉え方をご提示することも、有効なことがあるので、簡易ではありますが、ご紹介させていただきました。
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