くれたけ心理相談室 ニュージーランド カンタベリー支部のロバーツ多英子と申します。
今回は季節性感情障害についてまとめてみました。
- 冬季になると気持ちが塞ぎ込みがちになりやる気も喪失してしまう
- なんとなく鬱々して気分が晴れない
- 落ち込むような感覚になる
これらの症状を気のせいだと考える方もいると思いますが、これらの症状はSAD(季節性感情障害)から来る症状であるとも言えます。
「寒いのが嫌い」と言う場合でも、太陽が出ていれば冬を楽しめる人が多い中、気温が低い事自体が気持ちを左右してしまう事もあります。
日照時間も落ち込む原因の1つ。
国や地域によっても異なりますが、夏時間と冬時間があるNZを例にすると、夏時間である9月から3月の間は朝5時頃に日が昇り夜22時頃に日が沈みます。
それに比べると冬時間は朝8時頃に日が昇り夕方5時には真っ暗になります。
1年中夏の様な気候の国から移住している国民の中には、SADに悩まされている人も多い様です。
SAD(季節性感情障害)と言う言葉が初めて登場したのは1980年代。
秋から冬にかけて、きまって気分の落ち込みが見られる障害の事です。
秋または冬に抑うつが始まって、春や夏になると治まる特有のサイクルを繰り返します。
症状の多くは、普通のうつ病と同じ様です。
- 気分が落ち込む
- 気力がなくなる
- 生きる張り合いがなくなる
- 楽しめていたことが楽しく感じられなくなる
- イライラする
- 人と会いたくない
- 集中力がなくなる
- 疲れやすくなる
しかしながらSADにはうつ病とは少し異なる
- 睡眠時間が長くなる
- 食欲が増す
と言う症状もある様です
SADになると、冬の間、朝起きるのが辛くなり、日中にも眠気を感じる事が多くなり、またチョコレートやパン、甘いお菓子などの炭水化物が食べたくてたまらなくなる事があります。そのため、運動量も低下するため太りやすくなります。
SAD型うつ病は気温が上がり、日照時間も長くなる春になると回復します。
SADの原因
冬場の日照時間が原因と考えられている様です。
現代の生活では屋内で過ごすことが多く、日光に当たる時間が少なくなる事により、光が不足する事によって脳内でセロトニンの分泌が減り、そのためにうつ病になりやすくなっていると考えられています。
1年を通して曇り空が多いイギリスでは100人に3人が深刻な冬季うつ病になやまされています。また赤道近くに住む人が罹る事は少なく、赤道から離れるほどSADのリスクは高まります。
SADへの対策
光療法
なるべく日光に当たる。
生活環境や職場を明るくするものもありますが、日光浴ついでに運動を取り入れる。
日光を浴びて体内のセロトニンを増やす。セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの原料になるため睡眠、覚醒、季節感にも関与しています。メラトニンが不足すると様々な変調の原因にもなります。これらのホルモンを不足させない様に日光に当たる時間を増やす工夫が必要となります。
人工光(光療法用照明)を使用して日照不足を補う方法もあります。
この療法が有効である場合は、ほとんどの人が最初の1週間で症状の改善を実感している様です。また夕方5時以降は寝付きが悪くなる事があるので、使用は控えた方が良い様です。
バランスの取れた食事
SADにはセロトニンの不足が深く関わっています。
そのため、体内で作り出す点から食事にも気をつける必要があります。
セロトニンの材料となるアミノ酸の1つであるトリプトファン。このトリプトファンを効率良く摂取出来る肉や魚を多く摂取する事。そしてアミノ酸を効率良く吸収、利用するにはビタミンやミネラルも欠かせません。緑黄色野菜や果物も大切になります。
普段から適度な量とバランスの良い食事を心がける事が大事ですが、SADになりやすい方は特に秋と冬の食事に気をつける必要があります。
安定した睡眠
SADは体内時計の乱れも関係しています。
日照時間が短くなる冬は時差ボケの様な状態で、リズムが保ちづらくなります。
日光を浴びたり、食事に気を付けても、不規則な生活をしていては全てが狂ってしまいます。
起床時間と就寝時間を決めてリズムの良い毎日を送る事を心がける事が大切です。
私自身、冬は苦手な季節であり、寒さが嫌いです。赤道上に住みたいと考える程です。
しかしながら、日本に住んでいた頃は「寒い」と感じてはいても、気分が塞ぎ込む様な事はありませんでした。NZに移住してから、冬になると気持ちが落ち込む様になったと記憶しております。
この感情の変化は、やはり日照時間が大きく関係していると考えます。
夏季と冬季の日照時間に大きく差があるほど、SADを発症する可能性が増えると思われます。
参考文献:Royal College of Psychiatrists
くれたけ心理相談室 ニュージーランド カンタベリー支部
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