くれたけ心理相談室 札幌支部 榊原 一樹

<はじめに>

何をテーマに書かせていただこうか考えていた時、ふと先日、名古屋での総会があった後に先輩カウンセラーさんとお話をしていて、
「この時期は乾燥しますよね」なんていう話から、

「僕、アトピーで、今はだいぶマシになりましたけど、子供の頃はひどかったんですよね」とお話ししたら、
「それが原因でいじめられたりしなかった?」と聞かれて、そういえばそんなことはなかったなと思い返しました。

 

僕が小学生の頃に母が参観日か何かで学校へ来た時にクラスメイトが僕のアトピーで荒れ狂った肌のことなど気にも留めずにじゃれあって遊んでいるのを見た時に、「あなたは友達に恵まれたんだなって泣きそうになった」と言っていた意味が今になって分かった気がします。

冬になれば乾燥で肌が荒れ、夏は夏で汗で肌が荒れ、下着や白いTシャツなどは血で染まるということは日常茶飯事でした。
当の本人はわりと無頓着だったのでケアを怠って、肌がまた荒れるなんてこともありましたが、母は学校生活のことや将来のことをすごく気にしてくれていたんだなと感じます。

幸いにもそれが原因でいじめに遭うということはありませんでしたが、さすがにストレスを感じることはあり、下あごを突き出してキーキー奇声をあげていて、その結果、あごの骨格が変わってしまったり、痒みを我慢するために肌を叩いたりということはわずかながら記憶に残っています。

精神面に繋がる部分もあるかなと思い、あらためて調べてみたこと、感じたことを書かせていただきたいと思います。

アトピー性皮膚炎とは

小児アトピー性皮膚炎ハンドブック

皮膚のバリア機能の低下から、かゆみのある湿疹が慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気。
悪化要因の例としては、黄色ブドウ球菌、ダニ、カビ、汗、ペット、ストレスなどが挙げられる。

かつては、食物アレルギーがある子供がアトピー性皮膚炎を発症すると言われていた。

また、アトピー性皮膚炎がある子供は喘息になりやすいと言われている。

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私も子供時代、牛肉、卵、牛乳などのアレルギーがありました。現在では湿疹がありバリア機能が低下している皮膚から食物が入り込むことによって、食物アレルギーが発症するという仕組みが分かってきたとのことで、早期からの適切な治療で抑えられるそうです。

悪化要因の例にペットとありますが、友人宅の犬や猫には触れられなかったですし、触れたもしくはその家にお邪魔しただけでも、肌が荒れてくるということもありました。それでも動物が好きというジレンマを今も抱えつつ、東山動植物園にもお邪魔したわけです。

また、例に違わず私も喘息持ちでした。幸い喘息に関しては習い事でプールに通わせてもらったり、サッカー少年団に入って毎日のように運動をしていたら、いつの間にか症状は全く出なくなりました。

そして今回の調べで一番大事だなと思ったのが『こころ』との関係性(アトピー性皮膚炎とうつ)です。アトピー性皮膚炎そのものに対してもストレスを感じることから、日々のストレス→肌が荒れる→肌が荒れるストレスといった感じです。これが悪化してくると、うつ病不安障害などを併発してしまうこともあります。現在の容姿への悩み、痒みによるストレス、将来的な不安など、悩みだすと止まらなくなる経験は私自身もあり、仕事に行きたくない、人に会いたくないなどと心の状態が下がってくると、予定をキャンセルして引き籠もったり、逆にスキンケアを諦めてしまうようなこともありました。

私の場合は母が「自分のせい」と責めるようなこともあったのがすごく印象的でした。家系的な遺伝というのを気にしていたのですが、ご家族がアトピー性皮膚炎をお持ちの方も申し訳なさ、じれったさ、可哀想などという気持ちから、心を病んでしまう可能性も多分にあるようです。私自身は母が自分を責めるのを見ているのは心苦しくて、思春期には鬱陶しくもあり、自分のケアをしっかり続けようと思ったきっかけとなりました。

ご自身の近くにいる方やご相談者様などでもこういった悩みを抱えていらっしゃる方がいるかもしれません。何かのご参考になればと思います。

アトピー性皮膚炎の悪化からくるさらなる影響

上記の喘息だけでなく、白内障や網膜剥離になる恐れや、睡眠障害、成長障害という影響もある。

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私も顔にもかなり症状が出ましたが、視力等にも影響はなく、今も裸眼。眠ければ体育館の床でも寝るし、歯磨きながらも寝てしまうような人間なので睡眠障害もありませんでした。よく眠る子だったおかげか、身長も182㎝程にまで成長しています。強いて言うなれば2次性徴が周りより遅かったかなというくらいです。

治療法と実態

 ①スキンケア(皮膚の清潔を保ち、うるおいのある状態を保つこと)

 ②薬物治療(皮膚の炎症を抑える治療)

 ③環境整備(環境中の悪化因子をみつけ、可能な限り取り除くこと)

色々な民間療法などもありますが、科学的根拠がないものも多々あります。
現在のところ、根治する薬というものはまだ開発されておらず、症状の度合いによって使う薬の種類等は違えど、基本的な治療法がベストとのこと。

ステロイドの副作用

 *外用薬・・・長期にわたって使用すると皮膚が薄くなることも。

        乳幼児は成人より副作用は少ない。

  →必要量を決められた塗り方で使用していれば、まず心配はない。

 

 *内服薬・・・成長抑制、免疫抑制、多毛、満月様顔貌、白内障など

  →子供の方が副作用が出やすいので、あまり使用は好ましくない。

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『ステロイド』というものに抵抗がある方もたくさんいらっしゃると思います。以前に、「ステロイドまみれで俺の人生は終わってる」なんていう悲劇的なブログか何かを目にしたことがあって、私自身もそうなっているんだろうなと思っていた頃もありました。その方が適切な使用をしていたかどうかというところについては明らかではありませんが、皮膚科の先生に聞いてみたところ、そこまで悲観的にならなくてもいいとのお言葉をいただいて少し安心した記憶があります。

終わりに

一口にアトピー性皮膚炎と言っても、症状は人それぞれ。私自身が子供の頃よりは色々な研究が進んでいたり、妙なデマの拡散の様なものは減っているような気はします。

35歳になった今でも季節や環境の変化で症状が出ることはあります。結局は地道にケアし続けるしかないのですが、心と密接に結び付いた自分の身体のことを知識として正しく理解しておくことがすごく大事だなということにあらためて気づかされました。

同時に、私は自分の無頓着な性格に救われていたり、周りの友人や家族に恵まれていたんだなとあらためて感じることができました。

メンタルケアと同じく、本人がどう思うか、どうしたいかを大事にしながら、自分の周りの人や道行く人にアトピー性皮膚炎と思われる人を見つけると、心の中で「大丈夫、仲間だよ!」ってエールを送っている自分がいます。

医療の発展でいつか根治してくれる未来を願いながら、経験も踏まえて同じ症状を持つ方に寄り添っていけたらと思います。 

くれたけ心理相談室 札幌支部 榊原 一樹
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