皆さんは、APD「聴覚情報処理障害」という言葉をご存知でしょうか?
ご存じでない方の方が圧倒的だと思います。
今回は、発見されて日が浅く、まだ研究段階に入ったばかりのこの症状について記載させていただきます。 水上 奈美カウンセラー(川越支部)

【APD(聴覚情報処理障害)とは】

聴覚には何ら問題がないにも関わらず、日常生活のいろいろな場面の中で聞き取りにくさ・聞いた言葉の内容が理解しづらい状態が生じるというもの。

簡潔に表すとすれば、『聴力は正常である』ということです。

具体的には、音を収集・感知する「外耳・中耳・内耳・末梢の超神経」の機能には異常がなく、聴覚情報を処理する「脳」の中枢神経に何らかの問題がある状態。

音は聞こえているのに、『言葉の処理』が出来ない状態

【APDの症状】

・聞き返しや聞き間違いが多い

・長い話を理解するのが難しい

・雑音やバックグラウンドミュージックなど、環境が悪い状況下での聞き取りが難しい

・口頭で言われたことは忘れてしまったり、理解しにくい

・聴覚情報に比べて、聴覚情報の聴取や理解が困難である

※【APDとは〜APDの症状】まで、
https://www.signia.net/ja-jp/blog/global/hearing-health-auditory-processing-hearing-loss/〉SIGNER社参照

もう少し日常の情景に近い形で表すと、

・ガヤガヤとうるさい場所で、聞きたい情報が聞き取れない

・複数の人が話している中で、何を話しているのか理解できない

・複数の人が話す中で聞こうとすると、焦点を一人に集中させるため他の人の話が分からない。また、会話が交わされるとついていけなくなる。

・会話が早口だと途中から分からなくなってしまう。その影響から、時には頭痛に繋がることもある。

・ディスカッションに入れない。

・「聞こう」と無意識に努力をするため、その場面が終わるととても疲れる。

など…(←ここがポイントです)

【対処法】

・ヘッドホンで外音を遮断する

・しゃべる人に拡声器やマイクを使ってもらう

・席は前の方。しかし、1番前がよいとは限らない。※音の入り方・苦手な状況は本人にしかわからない為、必要に応じて移動が必要となる

・状況に合わせて補聴器を活用する(症状がひどく仕事ができない方)

・専用マイクを通して会話をする。
相手に話してもらい、自分はイヤホンやヘッドホンを使用してキャッチする
(症状がひどく仕事ができない方)

など…(←ここがポイントです)

【(ここがポイントです)の意味することとは】

ネットなどで検索すると『聞こえているけれど聞き取れない』や、『聞こえているのに聞き取れない』というワードが出てくるかと思います。「聞こえてるけれど聞き取れない?」文章からも理解しがたい疑問が浮かんできますよね。そこが、この症状を患う方々の辛さです。

私の娘は、幼少期から落ち着きがなくいつも何かにソワソワしていました。小学生の頃は、どんな場面でも周りをソワソワと気にし、先生が発言したことをノートに起こすことでさえとても不安を感じてきました。理由は、聞き取り写すが追いつかず忘れてしまうからです。(後に、「聞き忘れた」のではなくて、そもそも「聞こえてなかった」ということが解りました。)
テレビの音量は無意識に大きくなっていて、「耳がおかしくなっちゃうよ」と、愛情からの指摘をしつこいくらいに言われ続けてきました。今となっては「受けてきました。」が、正しい表現でしょう。
学校教育要領が改善されてコミュニケーション能力を重視する内容に変わった中学生時代、ディスカッションが全ての授業に取り入れられ黒板が使用されることが減りました。本人の心は苦痛へと変わっていきました。

上記に(←ここがポイント)と幾つか載せましたが、APDはまだ発見されたばかりの症状なので、解明されて載せられる項目も微々たるものです。検査方法は一般的な聴覚検査機械の中で、様々な雑音の環境をつくり『苦手さ』が強いものを見つけ、その個数で『APDである可能性が高い』と紐づけるところが現在の限界です。医師は仰っていました。

「この症状は障害ではないです。でも、この名前がついている。薬があるわけでもないし、回避は自分が過ごす中で見つけて行くしか方法がない。お子さんの為に、テレビを一緒に見るときは家族が我慢してとも言えないし、かと言ってお子さんはまだ成長期なので、ヘッドホンで音量を操作したり、聞くことの為に、使い続けるのは、結果聴力を下げるので望ましい形ではないです。」と。

人は誰しも、苦手は回避したり工夫しながら過ごし、子どもは経験を元に大きく育っていきますよね。ですが、『周りから見て理解してもらえない』障害には、娘の意思を尊重し学校にも協力をお願いしたり工夫を促しましたが、現実的には対応ができないんだと、改善されない現実に直面しています。

学校が寄り添ってくれないのではなく、人が多く集まる環境下では難しさの方が勝ってしまうという現実です。
その通りだとAPDではなく、一番娘のそばにいる親でさえ思います。ですが、同時にこうも感じます。
APDに限らず、何らかの障害があり回避しながら生きる者たちは『辛さの回避』を行いながら毎日を過ごしている。そのことを解って頂きたいのです。
現在、沢山の先生方がタッグを組み研究をしてくださっています。研究グループの代表は、大阪市大学医学部耳鼻咽喉科 阪本浩一先生です。
私たちが住む地域の大学病院には、阪本先生と研究をされている先生がおられ、しっかりと寄り添って下さいました。しかし、これは奇跡に近い偶然なことでした。
自分自身事をちゃんと大切にしてくれて「自分はそうかもしれない?」と苦悩を乗り越えて調べて情報をくれた娘には本当に感謝しています。
その娘へAPDではない私にできる事は何か?と考えた時、それは『発信すること』だと思い、今回この場をお借りし議題を提供する事に致しました。

APDでない方に分かってくださいとお願いしたいのではなく、『私は、APDって障害があって、こんなことが厳しいんだよね』と、気負いせず言わせてあげられる環境があればAPDの方々の負担はとても軽減されると思います。
どうぞ、APD「聴覚情報処理障害」を知ってください。

NHKが報じてくださいました。下記より、APDの方の生の声が聴けます。気にかけて下さった方がいらっしゃいましたら、どうぞご覧・ご視聴頂けましたら幸いです。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/miraiswitch/article/article47-2/

《NHK「未来スイッチ」より参考》

水上 奈美カウンセラー

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