メタ認知を意識したセルフカウンセリング
くれたけ心理相談室 京都南支部の中根 春奈と申します。メタ認知を意識したセルフカウンセリングについてご紹介いたします。
■メタ認知とは
「メタ」とは、「高次の」「~についての」などを意味する言葉で、「メタ認知」とは、いうなれば「認知についての認知」である。
例えば、「腹が立つ」のは単に「認知」の段階だが、
・「この怒りは、どのような理由・きっかけで発生したのか」
・「この怒りはどのようにすればおさまるのか」
などを考えることは、認知についての認知、つまり「メタ認知」といえる。
メタ認知を利用することを意識したセルフカウンセリングでは、上記のような感情や自身のおかれた状況に関して、「そもそも、なぜ」「どういう状況で」「どうすれば」など、より高い見地から見つめなおしながら行っていくことになる。
■どういった効果が期待できるか
・現状を主観とは別の視点で見つめ直せる
・思わぬ死角に気付くことができる
・思考と感情、状況を整理できる
・具体的な対処方法を考えやすい
・冷静になれる
・どうしたらいいかわからない、という時などに役立つ...など
■メタ認知を行うポイント、意識する視点
自分 + 環境 + 出来事 + etc... = 現状
自分を含めた、「現状」を形作る要素をそれぞれ別々に整理して考える。
◎感情と状況は一旦切り離して考える

■現状をメタ認知する際の流れ(一例)
・まずは大まかな感覚で、自分自身のことを考える。自分には今どういうものが見えていて、どういう悩みを抱えているか、
そしてそれについて、どう感じているかを認識する。
特に、自分がどういう感情を抱いているかを意識することはセルフカウンセリングにおいては重要になる。
(「もやもやする」「なんとも言えない気分」など漠然としていても、気持ちを再認識できていれば OK)
・続いて、自分のいる環境について考えていく。悩みの中心地(家庭・職場・学校・日常生活全般・特定の人間との関係など)、また、そこにおける自分の立ち位置、他の人の立ち位置などを一つ一つ整理する。
(紙に書き出したり、ミニチュアのハウスに人形を並べようとしているような視点を想像するとやりやすい)
・自分の状態・状況を整理できたら、悩みや感情の発端となった「出来事」についてを整理する。
時系列順に、具体的に起きたことを一つ一つ思い起こし、周囲の人の言葉や行動についても分かる・思い出せる範囲でまとめる。この時、できるだけ感情を介さず、純然たる事実のみに着目することを意識する。
(また、記憶には自身の主観的感覚・感情が作用し、事実と異なる形になっている可能性があることに留意するとよりよい)
■現状を整理した後の流れ(一例)
※以降の流れでも、メタ的な認知を意識し活用していく
・「現状」を形作るだいたいの要素を整理できたら、対処への第一歩としてまず、「どうなれば目的達成か」という、問題解決のゴールを考える。(例としては、「感情に振り回されることなく行動すること」「気持ちを落ち着けること」など感情ベースのものから、「目の前のある問題に対処し、終結させること」などの実践的なものまで、どんなものでもよい)
・設定したゴールに到達するためにはどうしたらいいかを考えていく。どうにかできそうなこと、どうにもならないことを仕分けする。具体的に、「ここは無理でも、このポイントだけでも解決できれば...」という風に明文化しながら、対処可能な範囲を探っていくとやりやすい。細かく整理しながら、その中で自分にとって無理なく実行できそうなことを考える。
(何ができるか、と合わせて、「どうしたいか」を考えることも大事である)
・最終的に、実行できそうなこと・したいことの中から、実際に自分はどう行動するかを考え、実行していく。
(対外的なものだけでなく、「どういう考え方に落ち着こう」という、内面的な行動も含める)
◎大事なこと
「セルフカウンセリング」と言っても、すべてを自分1人で実行しなければいけないということはなく、分析途中や解決方法を考えるうえで周囲の人の意見を参考にしたり、知恵や技術を貸してもらうことも時には重要であり、必要になる場合もある。(友人との雑談に交えて聞いてみたり、専門家や公共サービスを利用するなど、頼る程度や手段も考えられるとよい)
※状況を整理していく過程で「自分の分かる・できるところはここまで」という範囲もだんだん見えてくるので、他の人を頼る基準となるラインを見つけることもできる。(もちろん、その基準ギリギリを攻めるべきというわけではない)
また、定期的に行うことで自分自身の変化も感じやすくなる。自分が変わることで、見えてくるものも変わるため、環境の変化や感情面での引っ掛かりなど、何らかの違和感を覚えた時に実施してみるのも良い。
おわりに
メタ認知は、意識しながら現状を分析することで、漠然とした悩みや不安の正体もある程度推察しやすくなり、問題解決のための具体的な行動を見つけることに繋げられるため、悩みの解像度や大小によらず効果を期待できる。自分自身や辛い現状と向き合うことになり、思考することの負担が大きいという面もあるが、一連の思考の根本的な目的は「自分自身を自分の望む方向へと導くこと、また、その道のりを見つけること」である。自分のことを誰よりも深く熱心に考えてくれるのは他でもない自分自身、という感覚でもって、時によき隣人、よき相談相手となりながらセルフカウンセリングを実施するためにも、メタ認知は特に有用性の高い手段であるといえる。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
くれたけ心理相談室 京都南支部 中根 春奈
中根 春奈公式サイト