くれたけ心理相談室 愛知県名古屋本部・知多支部の田中絵里です。

認知機能行動療法は「認知機能という能力に問題がないこと」を前提に考えられた手法です。認知機能に問題がある場合、効果ははっきりとは証明されていないのです。
では認知機能に問題があるというのはどんな子どもたちか、まとめてみました。

1.浮かび上がってきた実態

・簡単な足し算や引き算ができない

・漢字が読めない

・簡単な図形を写せない

・短い文章すら復唱できない

見る力、聞く力、見えないものを想像する力がとても弱く、そのせいで勉強が苦手というだけではなく、話を聞き間違えたり、周りの状況が読めなくて対人関係で失敗したり、イジメに遭ったりしていたのです。

彼らに”苦手なことは?”と聞いてみると、みんな口を揃えて「勉強」「人と話す事」と答えています。

2.凶悪犯罪に手を染めていた少年たちが ”ケーキを切れない”
(児童精神科医と少年たちの面接)

「ここに丸いケーキがあります。3人で食べるとしたらどうやって切りますか?皆が平等になるように切ってください」という問題を出してみました。

図2-1粗暴な少年は半分だけ横に切ったり、4等分にしたり困った溜息をもらしていた
図2-2他の少年
図2-3そこで粗暴な少年に「5人で食べるときは?」と訊ねると彼は素早く丸いケーキに4本の縦の線を入れ得意そうに切った

(児童精神科医)
5個に分けてはいますが5等分にはなっていません。
「みんな同じ大きさに切ってください」と言うと粗暴な少年は図2-4のような切り方をしたのでした

分析

上記の図事態は問題ではないのです。

このような切り方をしている少年たちが強盗、強姦、事件、犯罪を起こしている中学生・高校生の年齢の少年たちだ、ということです。
彼らに反省や被害者の気持ちを考えさせるような従来の矯正教育を行っても、殆ど右から左へと抜けていくのも容易に想像できます。
またこういったケーキの切り方しか出来ない少年たちが、これまでどれだけ多くの挫折を経験してきたことか、そしてこの社会がどれだけ生きにくかったことかも分かるのです。

3.少年たちの特徴

・認知機能脳の弱さ
見たり聞いたり想像する力が弱い

・感情統制の弱さ
感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる

・融通の効かなさ
何でも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い

・不適切な自己評価
自分の問題点が分からない。自信があり過ぎる、なさ過ぎる

・対人スキルの乏しさ
力加減ができない、身体の使い方が不器用

具体的にどう対処していけばいいのか

(少年院での知見を学校教育に応用できる形でご紹介していきます)

・見る、聞くといった力に問題がないかを確認する。
反省させるよりも本人の認知力を向上させることの方が先なのです。

・感情統制の弱さ
感情を表現するのが苦手であるケースがほとんどである。
気持ちの日記というものを書いてみる。
良かったことーそのときの気持ち
悪かったことーそのときの気持ち
感情が不適切な行動を生み出してしまう為、不適切な思考パターンの修正点を見つける。

・融通の利かなさ
解決案のバリエーションの豊富さと、状況に応じて適切に選択肢を決める力を養う。
柔軟な思考や違った視点を持つことで、”被害感”の訴えが軽減する。

・不適切な自己評価
・対人スキルの乏しさ
自己を適切に知ること。
人との生活を通して他者とコミュニケーションを行う中で、適切にサインを出し合い、相手の反応を見ながら自己にフィードバックするという作業を、数多くこなすことが必要なのです。

現代は、対人スキルがトレーニングできる機会は確実に減ってきました。
SNSの普及で、直接会話や電話をしなくても、指の動きだけで瞬時に相手と連絡が取れます。携帯電話がまだ普及していないその昔、相手の家に電話をかける時には、本人以外の家族が出ることが多くありましたので、それなりに電話をかける時間帯や言葉遣いなどの最低限の礼儀は心得ていなければなりませんでした。
今ではそんな必要はなくなりました。
異性との交際についてもプロセスの途中で相手の気持ちを見誤り、自分の思い込みで一方的に進んでしまうとストーカー行為や性の犯罪行為につながってしまうこともあるのです。

知的なハンディをもって日々困っている方・子どもたちへの支援に少しでも繋がることを願い、カウンセラーとし認識していく必要もあるのではないかと考えております。

参考文献:「ケーキの切れない非行少年たち」 宮口幸治著 新潮新書

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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